ゲームから学ぶ本質的な幸福感について ~幸せな未来は「ゲーム」が創る~

書籍

はじめに

 私は幼稚園の頃からゲームが好きで、一番最初にやったゲームはゲームボーイアドバンスだったと記憶しています。今でも時間があるときは一日中モニターにはりつけになって、首が痛くなっていることに気づいてようやくやめる、というぐらいぶっ通しではまってしまいます。

 スマートフォンが普及してから世界のゲーム人口が爆発的に増えたと言われていて、eスポーツというゲームの大会の市場が今すごい勢いで広がっています。しかし日本ではあまりなじみがなく、ゲームは単なる娯楽だと思われています。

 そんなゲームですが、ゲームの持つ力について書かれた「幸せな未来は「ゲーム」が創る(著者 ジェイン・マクゴニガル)」という書籍を読んで考えたことを紹介したいと思います。

 

ゲームの不思議

 ゲーマーと呼ばれる人やYouTubeでもゲーム実況者と評される人、そして最近ではプロゲーマーと呼ばれるゲームを仕事とする人がいるように、ゲームにはまる人、そしてそれを見る人(ゲーム実況やプロの大会など)が世の中にはたくさんいます。人はなぜゲームにはまるのでしょうか?

 ゲームは一見、無駄な障壁を超える作業のように見えます。本書でも

やる必要のないハードな仕事に自発的に取り組み、そしてその努力の成果を心から気にかけている

と言われています。

 ゲームをよくやる人にはわかると思いますが、簡単に全クリしてしまうようなゲームはクソゲーと評され、ゲームをする人たちはやりこみ要素のあるゲームを良作とします。しかし、不思議なことに、現実で起こるこる仕事やあらゆることに対して、人はゲームと全く逆の反応を示します。すなわち、ハードな仕事は嫌われ、仕事は簡単ですぐ終わるものの方がいいと。なぜでしょうか?ゲームははまることができる、楽しいからと答える人はどうしてゲームがはまり、楽しいのかについて考えてみてください。

 

サスケとゲーム

 ゲームに夢中になる感覚が分からない人は、SASUKEのことを思い出してみてください。TBSテレビの番組SASUKEという番組はほとんどの人が一度は見たことがあると思います。SASUKEの出場者の中には、SASUKEのセットを自宅に作る人がいたり、SASUKEに人生をかけている人という出場者もいるほどです。私も昨年末SASUKEを見ましたが、そういった出場者が、ケガや壁を乗り越える姿はとても感慨深いものがあり、視聴者に多くの感動を届けているのだなと感じました。

引用 SASUKE公式ホームページ

 サスケも上で示したゲームのように、人生において超える必要のない障壁です。しかし、そこから多くの感動や喜び、ドラマが生まれるのは、こういった障壁を超えることに人間の本質的な幸福が隠されているのだと思います。

 

フィエロ

 両手を頭上に高く掲げて快哉を叫ぶ瞬間。この最高の瞬間に到達するための努力が大きければ大きいほど感じる感情。それがフィエロです。フィエロはイタリア語で「誇り」を意味し、英語では同じ意味の語がないと言われています。ハードな楽しさに伴う重要な感情です。

 

 このフィエロという感情は人間の根源的な感情であり、最新の研究によると(この本の初版は2011年)フィエロは私たちが経験する中で、最も強い脳科学的な高揚感の一つであるとされています。

 では、このような感情はどうして引き起こされるのかについて次にまとめたいと思います。

 

内発的、外発的な報酬

 これは2009年にロチェスター大学で行われた研究内容で、人間の動機について調べたものです。

外発的な報酬

 外発的な報酬とは、アメリカンドリーム的な目標をイメージしてもらえばわかりやすく、お金、名声、容姿の魅力といった幸福感のことです。

 外発的報酬を得たいという欲望で自分の時間や関心を埋め尽くしてしまうと、実際に幸福感を高めてくれる自己目的的な活動から遠ざかり、これらは幸福には全く寄与しないとまで言われています。

内発的な報酬

 内発的な報酬とは本書によると、真剣に自分の強みを磨いたり、社会的な関係構築に励んだりするといった行為から生まれる報酬で、ゲームの報酬もこれに当てはまります。内発的な報酬を重視する人達は、外部的な生活状況に関わらず、そのような活動をしていない人に比べて幸福であることが明確に示されているようです。

 

 この内発的な報酬が人間の幸福に大きく関係するというのは、ショーペンハウエルの「孤独と人生(幸福について)」にも同じようなことが書いてあり、とても共感することができました。この内的な報酬を手に入れるためにゲーマーは一見無駄な(外発的な報酬のない)努力をします。しかしこういった、とても困難なことを達成することで、脳には効き目の強いノルエピネフリン、エピネフリン、ドーパミンの混合物を生成し、フィエロという強力な感情を感じることができるのです。

 したがって、仕事といった外発的な報酬(お金)を目的とした現実のタスクからは、フィエロを感じられず、ゲームと真逆になってしまうことが分かります(内的な報酬から仕事に向き合っている人は別)。

もし内発的報酬が外発的報酬よりも満足感が大きく、私たちの幸福感を高めるのに効果的なのだとすれば、私たちは普段から、超える必要のない障壁や自己目的的な活動にもっと多くの時間を費やそうとするのではないでしょうか。(本書引用)

 

むすび ~ゲームの未来と可能性~

 eスポーツの市場が拡大しているように、多くの人がゲームにのめりこむというのは、不自然なことに見えて、その根源には生物学的な幸福が隠されているのだと思います。ゲームは明確な目標をもってデザインされたものであり、人に壁を与え、それを超えさせることによって幸福を与えます。

 本書によると、古代リディア人はゲームによって飢饉を乗り越え、ゲームで意思決定を行っていたようです。ゲームは現実の生活の質を高めるための手段でした。この点は今日の私たちにとってもゲームの重要な機能です。

 今私はゲーム情報学という分野に興味があり、勉強しています。そして、現代は物質的に満たされた世界であるからこそ、これから先の世界ではエンターテイメント産業の市場が大きくなるような気がしています。実際に、YouTubeや動画ストリーミングサービス、スマホゲームの会社などが大きな利益を上げているのは、通信インフラが整ったというのも1つの理由ですが、多くの人がエンタメに時間を割くようになったからです。そしてテクノロジーの発展によって(主にAIとか)、人間の可処分時間が増えれば、ますます人はエンターテイメントに時間を割くようになるでしょう。

 SASUKEに人生をかける人が美しく見えるように、ゲームに人生をかける人も美しいとされるような認識のある世界になってほしいと思います。そしてここまで読んで下さった読者の皆さんはぜひ、内発的な報酬を得ることができる、のめりこむことができるものに出会ってほしいと思います。

 

本の紹介

 この本の著者は代行現実ゲーム(ARG)の研究者で相当のゲーマーだそうです。この記事では代行現実ゲームについては触れず、序盤のところについて取り上げましたが、本書ではゲームの特性を明らかにし、それを使って現実をデザインする(ゲーミフィケーション)事例について紹介されていました。

 この本に出合ったきっかけは、NEWS PICKS Magazinで落合陽一さんがテックを知る7冊の必読書の中にあげていたのを読んだことでした。

 500ページを超える量でしたが、内容が面白かったのですぐに読み切ることができました。

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