時間軸の変化と不安への対処

雑記

 現代社会を生きる上で、多くの人がぼんやりとした不安を抱えていると思います。人類は稲作を始めたころから将来への不安を感じ始めたと人類学では言われています。この記事では、哲学、進化医学、人類学から見た人の時間軸のゆがみが引き起こす不安についてまとめていきたいと思います。

 

近代以降の時間軸の変化

 アマゾンの奥地に住む、ピダハン族という民族がいるそうです。彼らは悩みを感じることがなく(少なく)幸せに生きることができているようです。不思議なことに、この民族の間では「過去」や「未来」を表す言葉がないと言われていて、日本で生きる私たちにとっては驚くべき話のように聞こえます。

 時間軸について考えると、たいていの人が「過去」「現在」「未来」の三つに分けて考えると思います。しかし、近代以降、人間は現在という時間を、過去と未来に挟まれた中間点によって把握するようになってしまったと言われているようです(*1)。言い換えると、私たちの多くは、過去や未来を基準にして現在の行動を決めているということです。それは真の現在とは言えません。

 過去に縛られるというのは、「私は過去、〇〇のような問題を起こしたから現在は○○」「卒業した大学が○○だから現在はこのくらいしかできないだろう」といった過去を基準として現在の行動に制限を掛けてしまう思考です。次に未来に縛られるというのは、「未来は○○になっていたいから、今○○をしなければならない」「将来に備えて○○をしなければならない」といった思考です。このように考えてみると、多くの人が過去や未来を基準にして現在を生きていると感じると思います。

 

進化医学からみた人の不安の変化

 進化医学とは、進化生物学に基づいた医学であり、人類の早すぎる文明の変化から生じる身体の不具合があるという考え方をします。その一つとして、人が対処できる不安が変化したことにより、不安を感じやすくなったという話があります(*2)。

 結論から言うと、人間は(多くの自然界を生き残った生物は)近い不安に対しては対処するのが得意であると言われています。例えば、その日に食べ物がないことや、獲物を取りに行くときのような現在生じる多くの不安に対処しながら進化してきたためです。

サピエンス(人類)は、種のほぼ全歴史を通じて狩猟採集民族だった。過去200年間は次第に多くのサピエンスが都市労働やオフィスワーカーとして、日々の糧を手に入れるようになったし、それ以前の1万年間はほとんどサピエンスが濃厚を行ったり、動物を飼育したりして暮らしていた。だが、こうした年月は私たちの祖先が狩猟と採集をして過ごした膨大な時間に比べればほんの一瞬に過ぎない。(サピエンス全史)

 この文は進化医学や遺伝学の本質を指す捉え方だと思います。要するに、人はその日暮らしをするのに適した身体を持ちながら、稲作や仕事をし始めたため、それにより将来の遠い不安という新しい不安が生まれ、その不安に対処することができていないということです。

 

なぜ未来が遠いのか

 人がここまで未来志向になったのは、人間の文明の変化が一つの原因ではありますが、日本での教育制度や日本人の人生のロールモデルにも原因があると思います。

 小学校→中学校→高校→大学→就職とその間にはギャップイヤーのようなこの先の進路について考える時間は存在せず、皆一律に次のステージに進むような人生を誰もが思い描いています。中学校の勉強は高校受験のため、高校の勉強は大学受験のため、そして大学では就職のため勉強するというように、完全に未来を基準とした現在を生きています。学生にとっては、自分が今している勉強が何のためにあるのかと聞かれると、次のステージへ進むための勉強でしかなく、将来があって、そこから逆算された行動をとっているため、将来のぼんやりとした不安に襲われることになります。

 そのような、思考を持つ人の不安は、この先ステージが進んでいっても消えることはないと思います。高校受験を終えて一息つこうとしたら、そこには大学受験の勉強が待っていた、というようにいつまでも遠い不安が生まれていきます。

 

不安の解決策

 このように、人は遠い未来の不安に対処することはできません。これは割り切って受け入れるしかないことだと思います。ではどのように時間を捉えればよいのでしょうか。

 それは自分の意識や思考を現在に向けて、現在を基準に考えることです。先ほど紹介したピダハン族が幸せに生きることができるのは今の瞬間を生きているからだと言われています。過去を後悔することも、未来を不安に思うこともできないということになります。

 私はこれを、未来を考えないということではないととらえています。思い描く未来に向けたビジョンを持ち、そのために現在最適だと思われる行動をとることは未来を見ているようで現在を生きているということができると思います。

 

 この記事が、読者の皆さんにとって、自分の行動について見直すきっかけになればと思います。今やりたいことや、自分が本当に必要だと思うことをやるのが、真の現在を生きていると言えるのではないでしょうか。

 

参考文献 

*1)バカと付き合うな(堀江貴文、西野亮廣)

*2)最高の体調(鈴木祐)

*3)サピエンス全史(ユヴァル・ノア・ハラリ)

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