分人主義について考える

書籍

 私とは何か 「個人」から「分人」へ を読んで学んだことを紹介しようと思います。この本で紹介される「分人主義」という考え方は、きっと現在の社会を生きる人たちにとって新たなパラダイムとなってくれることだと思います。

 

分人とは

 分人とは、対人関係ごとに生じる様々な自分を指します。1人の人間は複数の分人のネットワークからできていて「本当の自分」という中心は存在しないと考えます。 これは近代的な「個人(individual)」とう考え方の限界を乗り越えるために発想された概念です。  

分人はすべて「本当の自分」である。私たちは、しかし、そう考えることができず、唯一無二の「本当の自分」という幻想に捕らわれてきたせいで、非常に多くの苦しみとプレッシャーを受けてきた

 きっと誰もがこの分人主義という視点で自分を振り返ると、腑に落ちる経験があると思います。学校にいる時の自分、家族といる時の自分、友達(○○さん)といる時の自分。それらすべてに同じ一つの人格で関わる人はいないと思います。 分人は、こちらが一方的に、こうだと決めて演じるものではなく、あくまでも相手との相互作用の中で生じるものです。  

 しかし、その時々でおおきな比率を占めている分人がいる場合があります。足場となるような重要な分人を一時的に中心として、その他の分人の構成を整理することもできるからです。ここでは、分人というモデルには一つの「本当の自分」というモデルが存在しないということを頭に入れておきましょう。  

 

分人の成り立ち

 分人には3つの段階があるとされています。

1 社会的な分人
 グループ向けの分人
3 特定の相手に向けた分人

社会的な分人

 これは初対面の人との関係で形成される分人です。不特定多数の人とコミュニケーション可能な、汎用性の高い分人で、コンビニの店員さんとの会話などが入ります。

グループ向けの分人

 特定のグループ(カテゴリ)に向けた分人です。社会的な分人がより狭いカテゴリーに限定されたもので、クラスメイトや職場の人との関係で出てくる分人を指します。  

特定の相手に向けた分人

 「社会的な分人」「グループ向けの分人」を経て、最終的に生まれるのが「特定の相手に向けた分人」です。特定の○○さんとの間で出てくる分人を指します。

 

 ここで面白いのが、分人化のスピードは、人それぞれのペースがあるということです。例えば、自分の好きな人に対してはその人向けの分人で自分は対応するものの、相手はまだ「クラスメイト向けの分人」で対応してくるということが起こるのもこの3種類の分人によるものだそうです。 

 この視点で考えると、私の個人的なものかもしれませんが、出かける時に一人、もしくは友達と2人が理想で、それ以上増えるにあたって居心地が悪くなるという感覚もこの分人という考え方で説明がつくと思いました。相手が一人の時は、その人と形成される分人で接することができるのだが、何人かになると、グループ向けの分人に変化してしまい楽しくないのだと思います。

 

個性とは何か

誰とどう付き合っているかで、あなたの中の分人の構成比率は変化する。その総体があなたの個性となる。 個性とは、決して生まれつきの、生涯普遍のものではない。  

 自分探しの旅や新たな本を読むのも、言い換えるならば、新たな環境にふれることにより、自分の中の分人の構成比率を変えようとしているのだと私は理解しました。もしも、自分がつらい仕事ばかりで(仕事の分人の比率が大きすぎて)嫌であるから、新たなものを自分に取り入れるといったように。  

「分人主義」のいいところは、なによりも変化を肯定的にとらえるところだ。

 もし、今の自分に納得できていなかったり、悩んでいることがあるのなら、分人主義という考え方について学んで、自分の分人について見直すのもいいかもしれません。

 

本の紹介

 分人主義については深く哲学的に考えると否定的な意見もあるかもしれません。著者も抽象的な人間一般についての理論ではなく、具体的な話に焦点を当てて話しているという断りを入れています。しかし、そのおかげでとても理解しやすく、読みやすい本でした。

 この記事ではほとんど紹介しませんでしたが、この分人主義の考え方で人間関係、引きこもり、思春期、恋愛、不倫、死といった様々なものを考察していて、分人主義を用いると腑に落ちる部分が多く、この本を読むことで、きっと新たな視点を手に入れることができると思います。

 こういった、新たなパラダイム(ものの見方、捉え方)を提示してくれる本を読むのはとてもワクワクします。

 

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